2012年に内閣府が行った介護保険制度についての世論調査では、介護保険について「知らない」と答えた人が全体の42.9%だったそうです。特に20〜30代の男女が多くを占めていました。
家族など身近な人に介護の必要性が出てきてから、初めて詳細を知る事が多い介護保険。サービスを受けるには、要介護・要支援認定が必須であり、自分から動いて相談・申請しなければならないことも、その原因の1つかもしれません。

急に体調が悪化した1人暮らしの母親。家族はどうする?

1人暮らしの母親を久しぶりに訪ねたAさん(40代前半・女性)。
「どうしたの?!」母親に会うなり、思わず大きな声をあげてしまいました。
「ん、ちょっとね。」片足を引きずるようにびっこを引き、家具につかまるように立っている母親。
以前会った時とは違い、顔色も悪くやつれていました。衣類もシワだらけ、部屋の中も散らかっており、何となく変なニオイまでしていました。
母親をとりあえずソファに座らせて、詳しく話を聞くことにしました。

「足が痛くて歩きづらい」「何かにつかまらないと真っすぐ立っていられない」「掃除・洗濯・炊事も以前のようにできない」「入浴も時間がかかり体力が消耗するので、毎日は入れない」「着替えもしづらい」「買い物もなかなか出られない」

そのような母親の言葉にAさんはただ驚くばかりでした。こんなに大変な思いをしているならば、何故自分に知らせなかったのか、医者にはかかったのか、とたずねると、

「だって、ただ老化現象の一種だと思って。お医者さんも行くだけで疲れるし。忙しい貴女を呼びつけるのも悪いでしょう?」と言う母親に、もっと頻繁に連絡を取り、会いに来ていれば、母親はここまで不便な生活をする事もなかったのでは、と思いました。

同居して介護するのが一番、とわかっているけれど

母親を自分たちと同居させて面倒を見ることが一番の解決策とはわかっているものの、Aさんは共働きで、日中はほとんど家を留守にしていました。介護のヘルパーを頼むにしても高い費用がかかるため、難しいと思っていました。
Aさんは、自分が学生だった頃、祖父が寝たきり状態になり、両親は祖父を引き取って自宅で介護をしていた事をふと思い出しました。
当時は、母親が専業主婦だったため、自宅介護が何とか可能でしたが、母親はいつも疲れきっているように見え、大変そうだったな、と。

では、今の自分にそれと同じようなことができるか、と考えても答えはすぐに出ました。「無理」と。
自分たちでどうすることもできない。しかし、このまま母親を放っておくのはあまりにも辛いと言うAさん。それを見ていた、中学生の子どもが言った一言にハッとさせられました。

介護保険は、正にこの時の為にある

「ねぇ、【介護保険】って使えないの?」
つい先日、学校の授業で現在の社会保険制度等について学んだと言うAさんの子どもは、
40才以上は加入義務があるから、お母さんも払ってるんじゃないの?だったら使えるんじゃない?」と言うのです。

税金や保険は給料から天引きだったため、介護保険の存在を忘れていたAさん。そういえば十数年前、支払う保険料が急に増えて不満をこぼしていたことを思い出しました。

介護保険について

介護
介護が必要な時に、要介護もしくは要支援の認定を受ければ、様々な介護サービスが殆どの場合1割負担で受けられるというものです。65才以上となった時点で第1種被保険者となり、通常の健康保険証とともに介護保険証が発行されます。

要介護認定を貰うためには?

Aさんは早速、母親の自宅から近いところにあった、地域包括センターに赴き、相談しました。
認定に必要なもの(こと)は、「介護保険証」と、「医師へ主治医意見書の作成依頼すること」。更には、「介護保険要介護認定調査で、74項目の基本調査項目を始めとする調査が必要」であること。認定結果は30日ほどかかるとも言われました。

相談に乗ってくれたケアマネージャーのCさんに、認定にあたってのアドバイスも貰えました。

  1. 認定調査の際にはなるべく家族も立ち会うこと
  2. 介護が必要な理由=現状で困っていること、大変なことのメモを作っておく
  3. 意見書を書く医師にも大変さを伝え、書いてもらえるようにお願いする
  4. 本人の身体の状況よりも、生活をどうしているかのほうが重視される

介護休暇を取りながら認定結果を待つことに

申請後Aさんは介護休暇をとり、介護休業給付金制度を利用することにしました。認定結果を待つまで、少しでも母親の助けになるように仕事を休むことにしたのです。
そして結果は、要介護状態と認められました。

親身に相談にのってくれた、Cさんに担当を依頼し、ケアプランを作成してもらいました。その結果、在宅介護で訪問介護を週に2,3回受ける、自宅の必要な部分に手すりやスロープをつける、などが実行されることに。

「おじいちゃんの時も、こういう制度があったらよかったのにねぇ。」
自分が介護をしていた時を思い出したのか、しみじみとつぶやく母親は、数週間前の悲惨な状態が嘘のようでした。Aさんは、明るく朗らかな様子になった母親に安心したそうです。

いざ、その時が来ても慌てないように。20〜30歳代のうちから、遅くとも加入義務が生じる40才の時点で、介護保険制度について詳しく知っておいた方がいいかもしれませんね。

──────────────────────────────────
介護リフォームマガジン
https://www.kaigo-reform.com
──────────────────────────────────

運営会社 株式会社オールシステム

Facebook https://www.facebook.com/allsystem.web
Twitter  https://twitter.com/alls_mag

〒460-0003
愛知県名古屋市中区錦1-17-13 名興ビルディング7F
TEL 052-220-5250 / FAX 052-220-5285
URL https://www.allsystem.jp/