介護現場には様々な事故のリスクが潜んでいます。

軽いけがで済むものや命に係わるもの、謝って済むものや訴訟・刑罰にまで発展してしまうものもあります。

こういった、介護現場で起こる事故のリスクを軽減する方法の一つが、リスクマネジメントです。

リスクマネジメントは、三つの要素で構成されています。

  • 事故の可能性を推測する
  • 事故防止システムを作る
  • そのシステムを運用する

事故を予見することは非常に難しいことですが、リスク回避のシステム作りによって回避の可能性を高めることができるのです。

日常の中でも、事故にはならなかったけれどヒヤッとしたり、ハッとしたりした瞬間があるはずです。

介護の現場では、この瞬間のことを「ヒヤリハット」としてリスクマネジメントのための分析対象にしています。

特に多い3つの事故を防止するためのリスクマネジメント

介護現場で起こる事故の中でも特に多いのが、転倒・転落、誤嚥、食中毒・感染症です。

まずは、これらの具体的な防止法を確認していきましょう。

転倒・転落

要介護者の転倒・転落は、加齢や運動不足、病気の症状、薬剤の副作用、環境の変化などが要因となって起こります。

精神的不安定でベッドから不意に降りようとしたり、暴れたりすることもありますし、椅子に座っていてずり落ちることもあります。

睡眠導入薬や鎮痛剤などで、ふらつきやめまいなどの副作用が出ることもあるため、注意しなければなりません。

転倒・転落を防止するためには?

  • 電気コードやくずかごなどを通路に置かない
  • 壁に杖、ベッド柵などをたてかけない
  • 敷物をしかない…敷きたい場合はタワミや折れなどが起こらないものにする
  • テーブルや家具の上に物を置かない
  • 段差には濃い色のテープを張って目につきやすくする
  • トイレの時間を見計らって付き添えるようにする
  • ベッド柵を設置する
  • ひじ掛け付き椅子を使用する
  • 昼間の活動時間を増やして夜の睡眠の質を向上させる
  • ベッドに慣れない場合はベッドの乗り降りの練習をする
  • 睡眠導入剤や鎮痛剤を使用している時は目の届く範囲にいるようにする

誤嚥(ごえん)

介護現場では転倒・転落の次に多いのが誤嚥事故です。誤嚥とは、食べ物などを誤って気管内に飲み込んでしまうことです。

これによって窒息や誤嚥性肺炎を引き起こし、最悪の場合は命に係わることもある恐ろしい事故です。

嚥下障がい(飲み込みやそしゃくの障がい)がある場合は特に注意が必要です。

誤嚥を防止するためには?

  • 要介護者の嚥下能力を把握する
  • 嚥下能力の低下がある場合は食事を柔らかいものなどに変える
  • 食後の口腔ケアに注意する…食べかすなども誤嚥の原因になるため
  • 家の中の食品の管理を徹底する

食中毒・感染症

要介護者は免疫力が低下している場合が多いので食中毒にかかりやすく、また重篤化するリスクも高くなっています。

時には命にかかわることもありますので、介護者は常に衛生面に気を配る必要があります。

食中毒・感染症を防止するためには?

  • 手の消毒、うがい、マスクの着用などを徹底する
  • 排泄物や体液に触れた器具、機材、ガーゼなどは必ず手袋を着用して触る
  • 感染症の潜伏期であることを常に疑い、衛生面への配慮を徹底する

介護現場の事故は原因別に4つに分けられる

介護現場の事故
介護現場で起こる事故を原因で分類すると、以下の4種類に大別できます。

  1. 高齢者や要介護者自身が原因の事故
  2. 介護者の問題で起こる事故
  3. 自宅や介護施設の環境が原因の事故
  4. 外部からの訪問者が原因の事故

具体的にどういうことなのか、それぞれ確認していきましょう。

要介護者の病気や生活歴の把握が必要

高齢者や要介護者が何らかの病気にかかっていれば、その病気からくるリスクを考える必要があるのです。

病気の他、手足が不自由である、耳が聞こえにくいなどの障がい、心の病気もあります。

また、癖や思い込みも無視できません。

介護者の認識不足が事故を引き起こす

在宅介護などでは、介護者が介護の知識を持っていない場合もあり、悪気はないのに事故を引き起こしてしまうということもあるのです。

食事介助のミスや調理、保管の不備、おむつ替えのミスなど、普通の生活から介護への切り替えができていないこともあります。

また、介護者が自分の感染症に気が付かないと、要介護者に感染症を移してしまうこともあるので、注意しなければなりません。

自宅や介護施設の構造・立地が事故につながる

自宅のバリアフリーや手すり、トイレなどのリフォームはもうよく知られていますが、こういった工事を行っていない場合は注意が必要になります。

また、建物の構造以外にも、立地が大きなリスクを抱えていることもあります。

川や湖、海などが近ければ水害の危険も考えなければなりませんし、消火活動や救助活動がしやすい場所の方がリスクを軽減できます。

訪問者がリスクを運んでくることもある

訪問してきた家族や親族はあらゆる菌を運んできますし、風邪気味程度の来訪者でも、要介護者にとっては大きな感染症につながることもあるのです。

また、お土産の食品が要介護者の食事制限の対象かもしれませんので、よく確認する必要があります。

介護現場のヒヤリハット

多くの場合、介護事故のリスクは単独ではなく複合的です。

介護現場では、ハッと気が付いて何とか大きな事故にはならなかったこと、ヒヤリとしたけれど何とか切り抜けられたことは数限りなくあります。

こういった場合の多くはたまたま運が良かっただけで、もし運が悪ければ大事故につながっていた、ということが多いのです。

介護現場では、このような事例をヒヤリハットとして記録分析することでリスクマネジメントのデータにしています。

介護現場で行われているリスクマネジメントシステム

介護マニュアル
リスクマネジメントで最も大きな部分を占めるのは、システムやマニュアルの構築です。

この部分がしっかりしていると、介護者は安心して日々の介護に励むことができます。

事故やヒヤリハットにかかわる記録を詳細に残す

介護施設や介護職が働く事業所には必ず事故報告制度があり、記録は5W1Hが明確に記録されるように、必要事項を明確に書き込める様式が設定されています。

事故記録やヒヤリハット記録を分析する

複数の報告を分析することによって、事故の原因や起こりやすい時間、場所などが分かってくることもあります。

また、以前に作られたシステムの欠点を見直して補う効果も生まれます。

事故防止のための具体策を検討する

事故記録やミーティングを通して、事故の原因を排除する行動基準を作っていきますが、この場合も5W1Hを意識して具体的で明確な表現が必要になります。

介護現場担当者だけで解決できない時は、要介護者の家族と連携を図ることも必要です。

介護者にとっても楽な方法が望ましい

リスクマネジメントでは要介護者が安全快適で、なおかつ介護者の労力を極力必要としない方法が良い行動基準と言えます。

介護者の過労や不合理感は、注意散漫やモチベーションの欠如といった新たなリスクを生む可能性があるためです。

リスクマネジメントの徹底で安全な介護を

ここまでリスクマネジメントについてご説明してきましたが、その重要性はお分かりいただけたと思います。

これらのリスクマネジメントを徹底し、高齢者や要介護者だけでなく、介護者も安全に介護生活を送ることができるようにしましょう。

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