明るさ、色に配慮して!高齢者の目を考えた照明選び

高齢者のための住まいリフォームにおいて、照明の選び方はその重要性の割に、意外と見落とされがちなポイントでもあります。

人は年を取ると、筋力や運動神経といった身体機能と共に、視覚も衰えます。視覚の衰えとは、ただ視力が下がり、視界がぼやけるといった症状だけではありません。
照度(光の明るさ)に鈍くなり、明るい場所にいても薄暗く感じる、逆に多少のまぶしさでも目を開けられなくなってしまうなど、この他にも様々な弊害が起こるものです。

では、高齢者にとって最適な照明とは、どのようなものなのでしょうか?

高齢者の生活領域によって明るさや色温度を調整しよう

20代と高齢者を比較した時、60代で約2倍、70代になると約3倍の照度が必要だと言われています。
では、「高齢者が生活しやすい照明=どの部屋も、通常よりも明るくすれば良い」なのかと言うと、そうではありません。
明る過ぎる照明は目に不快ですし、かえって生活を不便にしてしまいます。生活領域や時間帯によって、高齢者に適した明るさを細かく設定することがポイントなのです。

お部屋全体の明るさにおいては、高齢者であっても、各メーカーが推奨している「通常の部屋の明るさ(※)」で問題ありませんが、本を読む、ものを書くなどして目を使う作業場(リビング・書斎など)は、JIS基準の2倍程度(300~3000 lx)の明るさが必要です。

薄暗い玄関や勝手口は、高齢者にとって危険が多い場所です。基準の2~3倍程度(3~30lx)の明るさを確保し、できれば人感センサー機能の付いたポーチライトを設置しておきましょう。深夜の防犯対策にも繋がります。

(※)JIS(日本工業規格)が定めた、必要な明るさを確保するための推奨照明基準。

間接照明・補助照明を使って光を分散し、まぶしさを抑える

室内の関接照明
リビングや居間など生活の中心となる場所は、主照明のほかに壁や床などに間接照明を取り付けられるようにしましょう。光を分散させることで、まぶしさを抑えることができます。
また、ソファのそばにフロアスタンド、テーブルの上に卓上スタンドを置くなど複数の補助照明を組み合わせて設置するのも良いですね。

状況に合わせて必要な照明だけ点けることができるので、省エネにも繋がります。

昼白色の照明で認識しづらくなった青みを補助する

高齢者の目の特徴のひとつに、白内障の症状があります。白内障とは加齢によって水晶体が濁ってしまうことから起こるもので、例えるなら、常に黄色くくすんだフィルターがかかった光景が見えている状態です。

新聞や雑誌の文字が読みづらくなる原因のひとつでもあるので、照明は赤みを帯びた電球色よりも、青白い昼白色で青みを補ってあげましょう。

高齢者の生活導線に沿って、明るさの均一化を

高齢による視覚機能の低下で、暗順応速度も遅くなります。暗順応とは明るい場所から暗い場所へ移動した時に、徐々に目が慣れて、周りが見えるようになる自律神経のことで、60代以上の高齢者は20代と比べ、2〜4倍以上の時間がかかると言われています。

例えば、高齢者が明るい部屋から暗い廊下に出た時、廊下の照明のスイッチを見つけることができず、周りがよく見えない状態で廊下を歩いてしまうのは大変危険です。
ちょっとした段差につまずいたり、壁にぶつかってしまうかもしれません。それどころか、階段から足を踏み外して、転落事故が起こってしまう可能性もあるのです。

そのような事故を防ぐためには、高齢者の生活導線に人感センサー機能の付いた照明を設置するなど、明るさの変化が起こらないよう配慮する必要があります。
また、急に明るくなる照明ではなく、ゆっくりと点灯し、少しずつ明るくなる照明もおすすめです。

フットライトを活用!時間帯によって照明を使い分ける

階段や廊下などは、時間帯によって明るさを変える必要があります。
高齢者は深夜トイレに起きる回数も多く、眠りが浅いので、廊下の明るい光で目が覚めてしまい、朝まで寝付けなくなってしまう場合があるからです。

廊下には主照明の他にやわらかなオレンジ系のフットライトを設置し、昼は主照明で基準よりも少し明るめに、夜はフットライトだけを使用して光の刺激を和らげるなどの工夫を施しましょう。
階段には最上部と最下部に照明器具を設置し、最初の一段目がはっきりと分かるようにしておくことが重要です。階段の途中にはフットライトを設置してください。

フットライトは大変役に立つ補助照明です。
真っ暗な中での就寝を好み、常夜灯を点けることを嫌う高齢者の場合には、人感センサー機能付きのフットライトをベッドの足元周りに設置し、足を降ろした時に反応するようにしておくと良いでしょう。

高齢者でも簡単に操作、メンテナンスができる照明を選ぼう

高齢者向けの照明
天井の照明器具の取り付けや電球の取替えは、高齢者にとっては負荷が大きく、椅子や脚立を使用しなければいけない場合は非常に危険です。
できるだけメンテナンスのしやすい照明を選び、高齢者にかかる負担をいかに軽減するかがポイントです。

省エネにも!LEDで交換頻度を減らそう

高齢者の住まいには、寿命の長いLED照明を使用しましょう。

LEDは1日10時間の使用で約8~10年持つと言われており、これは白熱灯の数十倍の寿命になります。
例えば、LEDと白熱灯をそれぞれ10年間使用した時、白熱灯は8~9回の交換が必要なのに対し、LEDは一度も交換しない場合があるというわけです。1日の点灯時間やランプの品質にもよりますが、高齢者の負担を考えた時にこの差は大きいですね。

また、電気代も約10分の1とコスト面でも大変優秀です。

電動昇降装置やライコンを取り入れ、利便性をアップ

ひとつの部屋に複数の照明がある場合、壁のスイッチが増え、どの照明のスイッチなのかわからなくなったり、リモコンの管理が面倒になったりしますよね。

そのような場合は、各スイッチをひとつのパネルにまとめてコントロールする、ライコン(ライトコントローラー)を設置すると大変便利です。ワンタッチでシーンを切り替えることができ、高齢者でも簡単に操作できます。お好みのあかりパターンを記憶する機能が付いているものもあります。

吹き抜けなどの高い場所には、電動昇降装置付きの照明がおすすめです。スイッチを押せば照明が降りてくる仕組みで、高齢者でも簡単にお手入れができますよ。

デザイン性よりも、まずは使いやすさを重視しよう

大掃除の時に、照明器具のカバーがなかなか取り外せない、もしくは、取り外した後、上手くはめるのに時間がかかったという経験はありませんか?
着脱方式が複雑だったり、ゴムパッキンが硬くて力が必要な照明器具は避け、高齢者でも簡単に着脱可能なものを選びましょう。

また、繊細な細工が施されたデザイン照明などは、ほこりが溜まりやすく、こまめな手入れが必要なので、高齢者の住まいには不向きかもしれません。シンプルなデザインでも、オシャレな照明はたくさんありますよ。

高齢者が快適な生活を送るためには、段差の解消やドアの構造などと同様、照明のバリアフリーも大変重要なポイントです。
高齢者の目線に立った照明選びをしてくださいね。

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