日本人の死因の上位3つを挙げると、1位がガン、2位が心疾患、そして3位が肺炎となります。
この中でも、肺炎は高齢者にとって恐ろしい病気です。
というのも、65歳以上の高齢者の9割以上が、肺炎で亡くなっているのです。
高齢者の肺炎の7割以上が、誤嚥性(ごえんせい)によるものと言われています。
誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)とは、食べ物などが肺に入って起こる炎症
誤嚥(ごえん)とは、何らかの原因で食べ物や唾液、逆流した胃の内容物が気管に入ることをいいます。
つまり、誤嚥性肺炎とは、異物が気管を通って肺の中に入り、細菌が繁殖した結果、肺炎になることです。
高齢者の誤嚥性肺炎は、食事中だけでなく睡眠時にもよく起こります。眠っている時に本人が無自覚のまま、唾液などが気管から肺に入って炎症を起こすのです。
誤嚥性肺炎の原因は、加齢による喉頭蓋(こうとうがい)の機能低下
私たちが食べ物や唾液などを飲み込む時、のどから食道を通って胃へと送られます。のどの構造は、食道のすぐ隣を気管が通っているため、気管の入口には喉頭蓋(こうとうがい)と呼ばれるフタがあり、反射的にこのフタが閉じるようになっています。これらの働きによって、健康な人は気管に食物が入ることはほとんどありません。
ところが、高齢になるとフタの機能が低下します。その結果、異物が気管に入り、誤嚥しやすくなります。また高齢者だけでなく、脳梗塞などを発症していた場合でも誤嚥が起きます。
誤嚥には、「顕性誤嚥」と「不顕性誤嚥」があります。
「顕性誤嚥」は食べ物を飲み込みそこねて起こる
食事中に、飲食物を飲みそこねてむせることを顕性誤嚥と言います。本人や家族など周囲の人が気づきますので、これはほとんど問題ありません。
「不顕性誤嚥」は無意識に細菌を飲み込んで起こる
不顕性誤嚥とは、本人が気づかないうちに、唾液や口内の細菌を飲み込んでしまうことです。
食事中には問題がなくても、睡眠中に口内の細菌や胃の中の内容物が逆流して誤嚥をする場合もあるので、注意が必要です。
高齢者の誤嚥性肺炎は、この不顕性誤嚥によって引き起こされることが多いのです。
通常、健康な人の身体は、「嚥下反射(えんげはんしゃ)」や「咳反射(せきはんしゃ)」などの機能によって誤嚥から守られています。
嚥下反射(えんげはんしゃ)とは喉頭蓋のフタが閉まること
嚥下反射とは、食べ物を飲み込んだ際に、気管に行かないよう、反射的に喉頭蓋を動かして気管にフタをする反射のことです。フタによって食べ物は気管に入らずに食道を通って、胃に入ります。これらの動きは、無意識に行われています。
咳反射(せきはんしゃ)とは「むせる」こと
一般によく言われる、咳き込んで「むせる」ことを咳反射と呼びます。
食べ物などの異物が気管や肺に入ると、咳をして体外に排出しようとする働きです。
高齢者は、この2つの反射が低下するため、誤嚥性肺炎のリスクが高くなるのです。
誤嚥性肺炎によく見られる症状
食事中、食事後、それ以外の普段の生活状況でよく見られる症状を挙げていきます。
食事中
汁物などの水分でむせやすくなります。本人も辛いため、味噌汁などを避けがちです。
また、固いものを避けるようになり、ご飯を食べずに柔らかい麺類などを好むようになります。
飲み込んだ後でも、口の中に食物が残っていることもあります。
食事後
ガラガラ声になるときは要注意。気づかないうちに誤嚥を起こしています。
また今まで食べていた食事量が減り、残す事が多くなります。その結果、体重が減ってきます。
普段の生活状況
飲み込むのが辛いため、水分をとりたがらなくなります。そのため尿量が減ってきます。同じ理由で、薬を飲みたがらなくなります。
夜間睡眠中に、何度も咳き込む。
発熱が頻繁に起こると、肺炎を起こしている可能性が高いです。
発熱のために、1日中うつらうつらとしてぼんやりすることが多くなります。
誤嚥性肺炎の予防は睡眠中と食事中にできる!
誤嚥性肺炎にならないためには、睡眠中と食事中の予防が効果的です。
睡眠中の誤嚥を防ぐには口腔内ケアが大切!
睡眠前の口腔内ケアは大切です。歯磨きやうがいをしっかりと行い、入れ歯も消毒しておきます。口の中を清潔に保つことで、細菌による誤嚥を防ぐことができます。
また、口腔内のケアを行うことで、下記のような生活の好循環も期待できます。
改善順序
- 口腔内の衛生状態が改善される
- 食欲が増し、栄養状態が改善される
- 体力がつき、身体を動かすようになる。
- 会話も増える
- 口腔内の機能が向上する
- 口腔内の衛生状態が改善される
食事中の誤嚥を防ぐには半固形の食べ物が効果的!
効果的なのは、半固形物の食事にすることです。液状の食物は誤嚥を引き起こしやすいので避けましょう。豆腐、プリン、ムースなどは、栄養もあり誤嚥防止に適しています。
さらさらのスープのような食物には、市販されている増粘剤を入れて、とろみをつけるといいでしょう。
なるべく、テレビやラジオなどは消して、食事に集中することが大切です。
外部からの不必要な刺激があると、誤嚥の原因になります。高齢者本人が、リラックスして食事を楽しめる環境を作りましょう。
一度に沢山食べないように、ひと口を少量にしておくことも大切です。
横になったまま食事はせずに、できるだけ身体を起こした状態で食事をするようにしましょう。ただし、身体の調子が悪くて座れない場合は、ベッドを約30度の角度にして、リクライニング体制を作ると誤嚥しにくくなります。
食後はすぐに寝ないことです。食事が終わってから2時間以上は、できれば横にならないようにしましょう。
すぐ横になると、胃の未消化な食物が逆流して誤嚥の原因になることもあります。
また普段から、口の開口運動、舌や首を動かす体操、発声練習などのリハビリテーションを行うことでも、嚥下反射を刺激することができます。
誤嚥性肺炎は治療よりも予防に重点をおくこと
誤嚥性肺炎を発症すると、主に抗生物質によって、肺炎を引き起こしている細菌を抑える治療が行われます。
ただし、同じ抗生物質の治療を続けると菌に耐性がついて、治療が長期化することもあります。
重症化し、呼吸不全が見られるようであれば、酸素吸入や人工呼吸器を使用する場合もあります。
誤嚥性肺炎は、一度かかると何度でも繰り返すことが多い病気です。そして重症化すると治療が難しくなるため、できる限り予防に重点をおくことがポイントとなります。
その際、本人の注意も必要ですが、高齢者だと気づかないうちに誤嚥することが多いため、周囲の人たちも気をつけることが重要です。
発熱する、咳がでる、痰がでるなどの表面にはっきりと現れる症状を注意するだけでなく、元気が無くなったり、口数が少なくなったりしている時には、誤嚥を疑って対処することも大切です。
そして、医師や看護師などの専門家にすぐに連絡できるよう、日頃から備えておきましょう。
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