口の渇きは、高齢者や要介護者にとっては全身病の原因につながるほど深刻な問題です。入れ歯の不具合や虫歯、歯周病の原因になり高齢者や要介護者の生活の質を大きく低下させてしまうため、適切な予防とケアが必要です。

口の渇きへの対処には口内保湿剤がおすすめ

口の渇きへの対処法をいくつかご紹介します。中でも口内保湿剤は効果が高く、手軽に利用できるためおすすめです。

唇が切れたら濡らしたガーゼで覆う

口の渇きが進むと、唇が切れることがあります。軽い痛みならリップクリームを塗ることで対処できますが、乾いてバリバリになっている場合は、唇を濡らしたガーゼで覆って十分に潤す必要があります。その後ワセリンを塗るとさらに良いでしょう。

入れ歯は濡らしてから装着する

入れ歯の扱いにも気をつけなければなりません。荒っぽく扱うと、口の中の傷や口内炎などの原因になります。入れ歯は必ず濡らしてから装着しましょう。

口内保湿剤を使用する

口内保湿剤には保湿成分が含まれているため保湿効果が極めて高く、長時間口の渇きを抑えてくれます。

口内保湿剤には2つのタイプがある

口内保湿剤
口内保湿剤にはリキッドタイプとジェルタイプがあります。

リキッドタイプは自分でケアできる人に向いています。手軽に利用でき、簡単に口の渇きが治まります。

ジェルタイプは、自分でケアできない人に使用します。保湿効果が優れているので、口の渇きが進んでしまった人にも向いています。介護する人が高齢者や要介護者の口の中に塗ってあげましょう。

ジェルタイプは絶対に重ね塗りしないこと

ジェルタイプは繰り返し使用することが多いものです。この時、必ず前回の使用時にできたジェルの膜をきれいにはがさなければなりません。重ね塗りでジェルの膜が厚くなってしまうと、窒息事故などを起こすことがあります。

口が渇いている人は通常よりも口の中の温度が高い場合が多いため、厚くなった膜が腐敗を起こす心配もあります。

口内保湿剤には風味のついたものもある

口内保湿剤の主成分はグリセリンです。グリセリンは保湿性が高く、ほんのり甘みのある成分です。ほとんどの口内保湿剤は、グリセリンにヒアルロン酸などを組み合わせています。この他に、風味をつけるために果実のエキスやクエン酸、ハッカなどが配合されています。

高齢者や要介護者にとって、風味が好みに合うかどうかは意外に大切なことです。毎日使うものですので、介護する人の使い勝手がよく、高齢者や要介護者の好みに合うものを選びたいものです。

「渇き」だけがサインではない

口の渇きに迅速に対処するためにはサインを見逃さないことが大切ですが、単に「渇き」を訴える人だけではありませんので、よく観察してあげましょう。

痛みを訴える人も

口の渇きのサインとして最も多いのは、のどや口が渇くというものですが、中には入れ歯が合わない、痛いと訴える人もいます。

入れ歯は口が渇くと不安定になってしまうため、口の渇きの影響が出やすいものなのです。

また、舌や口の中の痛みを訴える人もいます。

自分で訴えることができない人はよく観察する

自分で症状を訴えるができない人は、介護者が口の中や全身の様子を観察してあげる必要があります。口が渇くと以下の症状が出ますので、こまめにチェックしましょう。

  • 口臭
  • 舌の上に唾液がない
  • 入れ歯が入りにくい
  • 唾液に粘りがある
  • 歯が唇にくっつく
  • 食物の飲み込みが悪い
  • しゃべりにくそうにする
  • オシッコの量が少ない

口の渇きは病気を引き起こす

高齢者や要介護者にとって口の渇きは、不快で苦しいばかりではなく、病気の原因にもなり得るのです。

虫歯、歯周病

口が渇くと、口の中に細菌や汚れがたまって虫歯や歯周病の原因になります。また、歯周病菌は脳梗塞や心筋梗塞、肺炎を引き起こすことが分かっています。

口内炎

口が渇くと口の中の粘膜が弱くなり、傷や口内炎ができやすくなります。痛みで食欲が減退し、高齢者や要介護者の衰弱につながることもあります。

誤嚥(ごえん)

食べ物や異物を誤って気管に飲み込んでしまうことなどを誤嚥と言います。

口の渇きによって食事の飲み込みが悪くなり、誤嚥を招くことがあるのです。口の渇きがある時は、柔らかく水分の多い食事に切り替えましょう。

誤嚥性肺炎

食べ物や逆流した胃の中のものが誤嚥によって肺に入り、細菌が繁殖することで引き起こされます。

口の渇きによって引き起こされる病気で最も重篤な症状ですので、注意しなければなりません。

口の渇きは唾液分泌の低下が原因

口の乾き
そもそも口の渇きは、唾液分泌の低下によって引き起こされます。では、なぜ唾液分泌が低下してしまうのでしょうか。その原因について、いくつか見ていきましょう。

加齢によって唾液分泌が低下する

唾液は咀嚼運動、しゃべるなどの動作によって分泌されます。

年齢を重ねると柔らかいものを好んで食べてしまいがちですから、食事中に噛む回数が減ってしまいます。これにより唾液の分泌も減ってしまうのです。

また、人と接する機会が減って話したり笑ったりすることが少なくなることも要因の一つと言えます。

病気の症状によって口が渇く

口の渇きは病気によって引き起こされることもあります。

  • シュクレーン症候群などの免疫疾患
  • うつ症状や不安障がいなどの精神障がい

この他にも、高ナトリウム血症や糖尿病、尿崩症なども口が渇く症状が出ますので、注意しましょう。

薬の副作用によって口が渇く

薬の副作用で口が渇くこともあります。止めることができない薬も多いので、口の渇きのケアが必要です。

  • 利尿剤(降圧剤、むくみの薬)
  • 抗コリン剤(過活動膀胱による尿失禁治療薬、ぜんそくの治療薬)
  • 抗ヒスタミン剤(湿疹や痒みを止める薬、アレルギー、咳、鼻づまりの薬)
  • 抗パーキンソン剤(パーキンソン病やパーキンソン症候群の軽減に用いられる薬)
  • 向精神薬(抗うつ薬、精神安定剤、睡眠導入剤など)

口の渇きの予防法は?

口の渇きへの対処法を解説しましたが、予防できればそれが一番です。

そこで、口の渇きの予防法についてもご紹介します。

鼻呼吸をする

口呼吸は口の乾燥を招きますので、日ごろから鼻を詰まらせないことが大切です。風邪や副鼻腔炎の治療をすることも口の渇きの予防・改善になります。

おしゃべりをする

おしゃべりは口周りの筋肉を使うだけではなく、脳のあらゆる部分を駆使します。脳機能の衰えを防ぐことで、唾液の分泌機能の衰えを防ぐことにもつながります。

十分な水分をとる

人によっては、失禁を気にして水分補給をセーブすることがありますが、飲み物を目につくように置くと飲みたくなることも多いようです。家族が飲む時に、一緒に飲むように誘うことも有効です。

また、寝たきりや動きが不自由な人は、哺乳瓶を使うとこぼさずに飲むことができます。

嚥下障がい(飲み込みの障がい)がある場合は、乳首の穴の大きさを調節することでリスクを減らせます。

カフェインを摂らない

緑茶、紅茶、コーヒーなど、カフェイン飲料は利尿作用があるので水分不足を招きます。水や麦茶、スポーツドリンクなどを飲むようにしましょう。

マスクを使う

マスクをすると乾いた空気が口に入らず、また自分自身の吐く息の湿気をそのまま口周りにとどめることができます。

舌のストレッチをする

舌を出したり入れたりする、舌をぐるぐる回す、舌を左右に動かすなどのストレッチは唾液の分泌を盛んにします。

室内の湿度を上げる

室内の湿度を55~60%程度に上げると口が渇きにくくなります。加湿器を使ったり濡れタオルをぶら下げたりして調節しましょう。

口の中まで見ることが重要

口の渇きは病気を引き起こすこともありますので、注意して観察してあげることが重要です。日頃から予防し、それでも症状が出てしまったら迅速に対処しましょう。

介護にはとても気を使いますが、口の中までしっかりと見てあげましょう。

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