迫る超高齢化社会!深刻な介護職員不足に伴う外国人ヘルパーの増加

日本の介護現場の人材不足は大きな社会問題のひとつで、将来高齢者となった時、充分なケアが受けられるのか不安に思っている人も少なくありません。

団塊の世代が75歳以上になる2025年には、後期高齢者が4人に1人の割合になり、2015年6月に発表された厚生労働省の調査では、全国でおよそ38万人の介護職員が不足するという結果が出ており、この数値は世間でも大きな話題となりました。

2017年現在、要介護の高齢者の数は介護職員の供給見込みを上回っており、現実にはさらなる人材不足に見舞われることが予想されています。
この需要ギャップを埋めるための対策のひとつとして、EPA外国人介護福祉士の受け入れがあります。

合格者は合計500人以上!EPAによる外国人介護福祉士

年々深刻化する介護福祉士不足解消のため、2008年、経済連携協定(EPA)により、介護福祉士となって日本で働く意欲のあるインドネシア人、フィリピン人、そして2012年からはベトナム人の受け入れを開始した日本。

対象者は現地の大学や看護学校を卒業し、日本語能力試験に合格した人で、4年という定められた滞在期間(※)に、日本語や介護について勉強しながら実際に介護施設で働き、滞在期間最後の年の4年目に試験を受けます。

開始からこれまでにおよそ2,500人以上が介護福祉士試験を受け、合格したのは2017年の時点で501人。ここ数年の合格率は50%近くをマークし、多くの外国人介護福祉士が誕生しています。
以来、多くの特別養護老人ホームや介護老人保健施設などの介護施設では、EPAに基づく外国人介護福祉士の採用を積極的に行っており、就労人数も年々増え続けています。

厳しい労働条件、少子化… 日本人介護職員が不足している理由

介護士不足
では、日本人介護福祉士の数はどうなのでしょうか?
実は、2000年以降日本人介護職員の数は年々増加傾向にあり、今では当時の3倍以上にも増えているのです。

それなのに、なぜ人手不足が解消されるどころか、深刻化の一途を辿っているのか?それには、介護現場の厳しい労働条件の他に、日本の少子化が大きく関係しています。

きつい・汚い・危険… 定着率を悪くする介護職の「3K」問題

日本の介護職員は年々増加していると説明しましたが、介護職はその労働条件や環境の悪さから、きつい・汚い・危険の「3K」と言われており、1〜3年以内に離職する人が非常に多く、人材が育たないという問題があります。

体が思うように動かない高齢者や、痴呆症の高齢者の介護というのは、体力的にも精神的にも非常に厳しい仕事です。
理想を持って介護職についたけれども、食事や排泄の介助、寝起きや歩行の介助は想像以上にきつかった、労働条件に給与が見合っていない、という理由から、短期間で辞めてしまう人が多いようです。

また、人手不足によって一人ひとりにかかる負担は大きく、自分の仕事に精一杯で、後輩の指導をする余裕がない、こんなに頑張っているのに全く評価されない…という現場の声も多く、経営者(運営者)や同僚との人間関係が上手くいかず、それが理由で辞めてしまう人も少なくないそうです。

働き手そのものが足りない!日本の少子化問題

1947年から1949年にかけての第一次ベビーブーム(団塊世代)には年間250万人以上、1971年から1974年の第二次ベビーブーム(団塊ジュニア世代)には年間200万人以上の出生率を誇った日本の出生率は、1980年代に150万人を下回って以来、年々減少傾向にありました。

2000年代に入ると少子化はますます深刻化し、20〜30代の、結婚して子どもを作る世代の人口が減少していることに加え、経済的な理由で子どもを作らない(第2子を産まない)、または結婚をしないなどの理由から、2016年にはとうとう100万人を下回るという事態になってしまいました。

ベビーブームによって生まれた多くの団塊、団塊ジュニアが高齢化していく中、将来の担う子どもの数は減少している日本は、労働力人口そのものが足りないのです。

少子化が解消されない限り、介護職員の人材不足はさらに深刻になっていくでしょう。

訪問介護の場に外国人ヘルパーを!文化と言葉の問題をどう乗り越えるか

文化と言葉の問題
厚生労働省は2016年、これまで介護施設でしか働く事を認められていなかったEPA外国人福祉士に、訪問介護の現場での就労を認めることを決定し、2017年の4月から実施されることとなりました。

しかし、安全性に問題はないのか、人権侵害・差別問題が起きて、外交問題に発展する可能性はないのかと、反対の声もあがっています。

訪問介護というのは、高齢者の自宅で、1対1の状態で生活の補助をするということ。介護施設での介護よりも、より高度なスキル、コミュニケーション能力が必要となります。

訪問介護サービスでの就労が認められているのは日本語能力試験に合格し、介護福祉士資格を持ったEPA外国人介護福祉士ですが、外国人ヘルパーが高齢者を介護することについては、様々な議論や意見があります。

偏見による人権侵害の問題

今まで外国人と一度も接したことがない高齢者の中には、外国人と自宅で2人きりになることに抵抗を感じる人もいるでしょう。さらに追言すれば、高齢者が外国人に対して強い偏見や差別意識を持っている場合、外国人ヘルパーと信頼関係を築くことは非常に困難です。ささいなきっかけで人権侵害や差別問題に発展する可能性もあり、デリケートな問題のひとつと言えます。

最大の壁、文化と言葉の問題

EPAの外国人介護福祉士候補生が入国時に必要とされている日本語能力は、フィリピン人とインドネシア人は「N5(基本的な日本語をある程度理解できる)」、ベトナム人は「N3(日常で使われる日本語をある程度理解できる)」と、国によってかなり差があります。

実際、介護施設で働く外国人介護福祉士に必要といわれている日本語能力は「N3」以上と言われていますが、利用者とワンツーマンでのコミュニケーションが必要な訪問介護の現場ではどうでしょうか。

自宅で2人きりの状態というのは、何か起きた時にひとりで対処しなければいけないという事です。
緊急事態が発生した時や、大きな失敗をしてクレームに発展した時は、状況に合った対応を臨機応変にしなければいけませんし、介護記録の記入や申し送りの際は、日本語特有のニュアンスなどを適切な日本語を使い、利用者の家族や他の介護職員に正確に伝えなえければいけません。
「N3」レベルの日本語能力で、それらをクリアすることができるのか、日本語能力の水準を見直す議論がされています。

また、文化の違いによる料理の味付けや、生活習慣の違いなども大きな課題となっており、日本の文化や言葉を学ぶ研修や、対応マニュアルの徹底、指導者を同行しての2人体制で訪問するなど、様々な方針や対応が示されています。

重要なのは、高齢者が信頼・安心できる介護体制

外国人ヘルパーを増やすことで、介護現場の人材不足を補うという方針は決して間違ってはいません。しかし、様々な問題が生じる可能性があることも確かです。
まずは高齢者が外国人ヘルパーを信頼し、安心して介護が受けられるように、国がその体制を整えることが重要だと言えるでしょう。

──────────────────────────────────
介護リフォームマガジン
https://www.kaigo-reform.com
──────────────────────────────────

運営会社 株式会社オールシステム

Facebook https://www.facebook.com/allsystem.web
Twitter  https://twitter.com/alls_mag

〒460-0003
愛知県名古屋市中区錦1-17-13 名興ビルディング7F
TEL 052-220-5250 / FAX 052-220-5285
URL https://www.allsystem.jp/